
はじめに
ずっと書きたかったことがある。
それはラスこと、ラッセル・ウェストブルックの話だ。
厳密には、私個人のラスとの想い出話と言った方がいいかもしれない。
特にラスのファンというわけではなかった私が、ラスの人柄に触れてファンになり、彼に顔を覚えてもらえるようになるまでのその過程を、自分のために記録に残しておきたいとずっと思っていた。
本当は、ラスがサンダーにいる間に書いておきたかったけれど、なかなか重い腰は上がらず。
やっと少しずつ書き始めた昨年のオフに、ラスはロケッツからウィザーズへと移籍。
もしかしたら、この記録を書き残すタイミングはこれで良かったのかもしれない。
ずっとラスを見てきたサンダーファンは、きっとどこかで彼のことをちゃんとわかっていると思う。
サンダーを離れ、ロケッツを経て、ウィザーズへ移籍した今だからこそ、私の想い出話を通して、新しいチームのファンにラスの人柄が少しでも伝わったら、私としてはそれこそ一石二鳥。
ということで、これから少しずつ、ひとつひとつのエピソードの記憶が断片的にでも残っているうちに、ラッセル・ウェストブルックの話をしようと思う。
ラッセル・ウェストブルックってどんな人?
最初に聞いてみたいことがある。
あなたは『ラッセル・ウェストブルック』と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?
コート上のラスなら、あの熱く、激しく、荒々しく、良くも悪くもハラハラドキドキするエキサイティングなプレイや、表情豊かで、喜怒哀楽を隠さず表に出しまくる姿だろうか。
試合後のロッカールームでのインタビューではほとんどニコリともせず、特定の記者に対して「はい、次の質問」と言い続けることもある、不機嫌で愛想の悪いラス?
もっとプライベートまで踏み込んで、彼や奥さんのニーナのインスタまでチェックしている人なら、長男のノアくんと双子の娘、スカイとジョーダンに向ける優しい眼差しから、穏やかな家族想いのパパを思うのかもしれない。
My little ones!!! ❤️❤️❤️ pic.twitter.com/iofGrzvvGM
— Russell Westbrook (@russwest44) December 27, 2019
もちろん、そのすべてがラッセル・ウェストブルックなのだけど、彼のどこを見ているかによって、彼の印象は変わるし、好き嫌いも大きく分かれる気がする。
そもそもNBAを見るのに選手の人柄なんてどうでもいい、という人もいると思う。
NBAプレイヤーに求めるのは、コート上の仕事ぶりだけだという人にとっては、彼のプレイは時に悩みの種にしかならないかもしれない。
ボールを持ち過ぎる選手、チームメイトを活かせない選手、一緒にプレイしたいと思わない選手として、嫌っている人もいるだろう。
同時に、やっぱりラスはどの試合にも全力で、負けて沈んでいるチームの雰囲気をガラッと変えてしまう、あの不思議な力に惹かれてしまう人もいるはずだ。
アンチラスの人たちがどれだけ彼を嫌ったとしても、同じチームで戦った選手たちが、なんだかんだ彼を好きになる様子や、彼の仕事に対するストイックな姿勢に影響されて成長する姿を見て、やっぱりラスが大好きだと、思いを新たにする人もたくさんいるんじゃないかな。
何を重視して、どこを見ているかで、意見が割れるのは仕方ないのないこと。
ただひとつ、もしも何かひとつ、皆の意見が一致することがあるとすれば、それは、『ラスはいつもまっすぐに、自分の心に従って行動している』ことではないかと私は思う。
コート上で、強烈なダンクをしてアドレナリンが出まくれば、雄叫びを上げて胸を叩く。
嬉しい時は、子供のように満面の笑顔を見せる。
対戦相手やチームメイトに腹が立てば、今にも噛みつきそうな勢いで向かっていく。
フラストレーションが溜まると、ムキになって途端にミスが増える。
試合に負けて自分に怒っていたら、相手チームはもちろん、ファンに目もくれず足早にロッカールームへと消えていく。
そんな時は当然、記者にも冷たい。愛想笑いなんてしない。全身から不機嫌が伝わる。
メディア対応は、以前より少し大人になって気を遣うことも増えたかもしれない。
でも基本的に、彼は有言実行の人で嘘は言わない。
相手を喜ばせるための発言はしない。
自分の思いをまっすぐに伝える。
だから煙たがられ、嫌われるのかもしれない。
そしてだからこそ、好かれるのだと思う。
私が見たラッセル・ウェストブルック
ラスは試合前のルーティーンを大事にする選手で、アリーナでのシュート練習をファンの前ではしないことで知られている。
ホームの試合では、ティップオフの3時間以上前にアリーナに来て、シュート練習はファンが入ってくるずっと前に終わっているので、残念ながらアリーナに行けば会えるという選手ではない。
私がラスと直接交流するチャンスに何度も恵まれたのは、OKC在住で色んなイベントに行けたことが大きい。
TVやネットやSNSのようなメディアを通して見てきたラス…
スクリーンを通さずに、ダイレクトに目撃したラス…
そして私自身が直接コンタクトを取ったときのラス…
そのすべてから、私が思い浮かべるラッセル・ウェストブルックは、『まっすぐで、優しくて、誠実な人』だ。
ウィザーズの入団会見で、ラス本人も自分のことをこう話していた。
僕は、まっすぐで嘘偽りがなくて誠実で、思いやりのある人間だよ。わかりにくいかもしれないけどね。
まっすぐだからこそ、コート上であの激しい一面を見せるのだけれど、そのインパクトが強過ぎて、優しくて誠実な一面は隠れてしまってわかりにくいのかもしれない。
だからこそ、この【ラスとの想い出】シリーズでは、私が見た、温かくて穏やかで、思いやりのある、そんなラッセル・ウェストブルックの話をしようと思う。
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