
NBAは11月6日(日本時間7日)、オクラホマシティ・サンダーで今季2年目を迎えたジョシュ・ギディーのドキュメンタリーをNBA公式アプリで公開した。
ドキュメンタリーの題名は、“Josh Giddey: Record-Breaking Rookie”(ジョシュ・ギディー:記録を更新したルーキー)。
この夏、故郷のオーストラリアのメルボルンに戻った際に、ギディーが自身のNBAでのルーキーシーズンを振り返るとともに、2022-23シーズンの抱負を語った内容だ。
多少、構成は変えているが、ここまで紹介したエピソードは以下の通り:
第1弾では、2021年7月のドラフトで指名された瞬間からオクラホマシティにやってくるまで
第2弾では、2021年のラスベガスでのサマーリーグの負傷から、ギディーがパスで注目されるまで
第3弾では、史上最年少でのトリプルダブル達成という記録を更新するところから、レブロン・ジェームズに認められ、オールスターに参加するまで
第4弾で最終回の今回は、ルーキーシーズンを終了したギディーが2年目のシーズンをどう迎えようとしているかを見ていこう。
「チームの将来にワクワクしている」残念な結果に終わったルーキーシーズンを終えて
パスで注目を浴び、1月2日にNBA史上最年少記録となるトリプルダブル達成を果たしてさらに一目置かれるようになったジョシュ・ギディーは、10月/11月から、12月、1月、2月と、4か月連続でウェスタン・カンファレンスの月間最優秀新人賞に選ばれた。
ところが、オールスターに参加してまもなく、2月後半に股関節を痛めて試合を欠場し始めると、3月26日には残りのシーズンの欠場が発表される。
54試合に出場し、1試合平均12.5得点、7.8リバウンド、6.4アシストを記録したギディーのルーキーシーズンは不完全燃焼に終わった。
そして、サンダーも24勝58敗という戦績で2020-21シーズンを終了する。
そのシーズンをギディーはこう振り返る。
「タイガース(メルボルン・タイガース)や州のチームでずっと勝ち続けて育った僕にとっては、望んでいたほど多くの試合に勝てないっていう状況は全然違う。
でも、チームとしての現状は理解している。再建中の若いチームなんだ。
僕らが向かっている方向はとてもポジティブで、負けたとしてもそこから何かプラスを得ることができる。もちろん、僕らは来年はもっと勝ちたいと思っているし、再来年はさらにもっと勝ちたいんだ。僕らが向かっている方向は間違っていないし、僕はチームの将来にワクワクしているよ」
「僕には成長の余地がまだまだある」トレーニングに励んだオフ
ルーキーシーズンを不完全燃焼で終えたギディーは、この夏、カリフォルニアでトレーニングをした。
「オフシーズンになるのを楽しみにしていたんだ。改善しなくちゃいけないことや取り組まなきゃいけないことがたくさんあるからね。選手たちが大きく飛躍するかどうかがかかっているのがこの時期なんだ」
「僕にはまだ成長する余地がたくさんある。コート上で何ができるのか、どんな選手になれるのかっていう意味でも、今見えている部分は氷山の一角に過ぎないと思っているし、19歳だってことを考えても、当然、もっともっと強くなったり、そういう伸びしろがある。これから先、まだまだ成長し続けるってことにワクワクしているんだ」
ソルトレイクシティでのサマーリーグ2022
この夏のシーズンオフ、オーストラリアとカリフォルニアでトレーニングをしたギディーは、ユタ州ソルトレイクシティのサマーリーグに出場。
フィラデルフィア・76ersとの試合では、クロスでディフェンダーを1人かわし、ブロックに飛んできたもう1人のディフェンダーに真っ向からダンクを決め、倒れた相手を上から睨みつけるシーンもあった。
「2年目の選手はサマーリーグに出ないこともあるなかで、ジョシュは次のシーズンに向けて成長し、昨シーズンとは違う選手になっていることを証明する気満々だった。彼の身体能力を疑っている人も多いと思うが、あの時ディフェンダーをかわして一気にリムにアタックして、その身体能力とメンタリティの強さ見せつける彼の姿が見れたのは良かったと思う」
—マイケル・ヒューベン(オーストラリア人記者)
ギディーが相手を睨みつけるようなシーンを見ることはそうはない。彼はどちらかと言えば優等生タイプだ。
それでも、実は内には熱い想いを秘めていることを、オーストラリア代表選手でもありWNBA(サウスサイド・フライヤーズ)でもプレイするレベッカ・コールはこう話す。
「アスリートとしては、周囲が間違っていることを証明するのが一番ですが、ギディーのことで私が大好きなのは、コート上で自分の行為を勝ち誇らないところなんです。彼は『俺の実力を見ろよ!』みたいに周りに言う代わりに、彼を嫌う人たちに対してその実力を見せるために、ただジムで練習をするだけなんです」
オーストラリア出身、そしてNBAグローバルアカデミー出身の選手として
このドキュメンタリーは、ギディーがオーストラリアのメルボルンに帰っていたときに撮影されている。
オーストラリアでは、アデレードで子供たち向けにキャンプを開催し、メルボルンに戻って家族や友人に会ってリフレッシュをすると同時に、当然トレーニングにも励んだ。
オーストラリア出身の選手として、NBAの忙しいスケジュールの中でも地元に恩返しをしようとする姿には感心する声も多かったようだ。
キャンプを開催したときのことについてギディーはこう振り返る。
「少し前までは僕もその1人だったんだ。だからどれだけ興奮するか、自分のロールモデルであり憧れの人が目の前にいて、自分の近くに来てくれるのがどんな気持ちなのかはよくわかる。
自分がキャンプを開催できて、参加してくれる子どもたちにお返しができることは、僕にとって本当に大きな意味を持つんだ」
ギディーがトレーニングを一緒にしたのは、NBAグローバルアカデミーでコーチをしていたロビー・マッキンレー(Robbie McKinlay)だった。
ここで、ギディーが過ごしたNBAグローバルアカデミーについて少し説明しておこう。
NBAグローバルアカデミーは、オーストラリアのキャンベラのAustralian Institure of Sport (AIS) のバスケットボール・オーストラリア(BA)センター・オブ・エクセレンスにあるバスケットボール専用のトレーニングセンターの1つ。
NBAグローバルアカデミーはBAとのパートナーシップにより、米国外の男女トップアスリートのためのNBAのハブとして機能している。毎年最大16名のエリートアスリートがNBAグローバルアカデミーに参加し、NBAが採用したコーチの監督のもと、BAのセンター・オブ・エクセレンスのチームやコーチと協力してトレーニングに励む。
BAのセンター・オブ・エクセレンスは、アンドリュー・ボーガット、マシュー・デラベドーバ、ダンテ・エクサム、ジョー・イングルス、ルーク・ロングリー、パティ・ミルズなど、多くの現役・元NBA選手を輩出している。
ジョシュ・ギディ(2019年NBAグローバルアカデミー卒業生)は、NBAアカデミー卒業生として初めてNBAドラフトで指名された選手となった。
前述のマッキンレーは、ドキュメンタリーの最後に次のように話している。
「ロッカールームの壁には、Australian Institure of Sport (AIS) 、Centre of Excellence(COE)、NBAグローバルアカデミーを出て、NBAで1分でもプレーした選手がすべて貼り出されています。
その壁には、今は20人、そしてもうすぐダイソン(ダニエルズ)も含めて、21人の選手の写真が貼られるでしょう。こういうことが実際にが起こり得るのだということを、毎日実感できるのです。
私たちは、NBAだけでなく、Boomers(オーストラリア代表チーム)やU-19に向けた準備ができるようにしています。そして、ここで過ごす選手たちが、『僕は12か月前にこの人と一緒にトレーニングをしていて、彼は今NBAにいる』ということを実感できるのです。
今ここにいるみんなには、同じような野心を持ってほしいと思います」
ダイソン・ダニエルズは、2022年のドラフト全体8位でニューオーリンズ・ペリカンズに指名され、NBAアカデミー卒業生としてNBAでドラフトされた2人目の選手となった。
ダニエルズのNBA入りで、NBAグローバルアカデミーは今後さらに注目されることだろう。
そして、今後、ルーキーのダニエルズとともに、2年目を迎えたギディーにも期待がかかるに違いない。
最後に…
ルーキーシーズンに記録を破り、周囲が期待した以上の活躍を見せたことで、最後はケガでシーズン終了を経験しつつも、今シーズンにも期待が集まったギディーだが、残念ながら、ここまでまだ安定した成長の証を見せられているとは言い切れない。
ここ数試合は少しずつ積極的なプレイをするようになりつつあるが、シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのあまりの成長ぶりに、その差を比較される機会も増えている。
しかし、忘れがちだが、彼はまだ20歳になったばかりだ。本人が「今見えている部分は氷山の一角に過ぎないと思っている」と語ったとおり、彼にはまだまだ伸び代がある。
そして、ダメだと言われれば言われるほど彼の内なる闘志が燃え盛り、自分を証明しようとすることだろう。
このドキュメンタリーを通して、ギディーの気持ちの強さを改めて知ることができた今は、そこに期待せずにはいられない。
NBAグローバルアカデミーについて注目ポイントを2つ紹介
- NBAグローバルアカデミー出身のギディーとダニエルズの対戦は、11月28日(日本時間29日)にニューオーリンズで実現する。ダニエルズは対戦について、「ギディーと僕はすごく親しいんだ。子どもの頃から対戦して一緒に育ってきた。手加減するつもりはない。その対戦が待ち遠しいよ」と話している。
- NBAグローバルアカデミーには現在、日本人のジェイコブス晶(Akira Jacobs、18歳)が参加している。彼が、ロッカールームの壁に貼られたギディーとダニエルズの写真を見て、日々刺激を受けていることにも期待したい。








