何をやってもうまくいかない。
あがけばあがくほどうまくいかない。
そんな日が誰にでもある。
そうかと思えば…
何をやってもうまくいく。
理由も理屈もわからないけど、すべてがおもしろいほどうまくいく。
そうそう起こることじゃないかもしれないが、そんな日もある。
2023年1月3日、オクラホマシティ・サンダーにとって新年初戦となったボストン・セルティックスとの試合は、両チームにとってまさに『そんな日』だった。
うまくいかなかったのはセルティックス。
うまくいったのはサンダーだ。
新年早々の記録づくし
150-117で快勝したサンダーはこの日、うまくいきすぎて数々の記録を作った。
- 150得点は球団記録
※その前は2019年のミネソタ・ティンバーウルブズ戦でダブルOTでの149得点
※レギュレーションだけで言うと、2018年のクリーブランド・キャバリアーズ戦での148得点 - 第3Qの48得点は球団記録
- 最大37点リードは今季最多
- ジョシュ・ギディーの25得点(3P: 3/5、FG: 10/15)は今季最多
- 5人の選手が20得点以上を記録したのは球団史上2度目
※ギディー25得点、ルーゲンツ・ドート23得点、アイザイア・ジョー21得点、トレイ・マン21得点、ジェイレン・ウィリアムズ21得点
※1度目は2019年にシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、クリス・ポール、デニス・シュルーダー、スティーブン・アダムス、ダニーロ・ガリナーリの5選手が20得点以上を記録 - ジェイレン・ウィリアムズの4スティールは自己最多
風向きが変わったのは試合前「シェイの欠場で気が緩んだ」セルティックス
この試合の風向きは、試合開始前から変わり始めていた。
午前中のシュート練習のときには問題のなかったシェイの体調が、午後になって悪化。新型コロナウイルスではない病気で欠場が決定した。
現在リーグ首位に立ち、リーグ最強デュオとも言われるジェイソンて・テイタムとジェイレン・ブラウン率いるボストン・セルティックスを相手に、主な得点源であるシェイを欠いたサンダーが、セルティックス相手に勝てる要素は皆無に思えた。
セルティックスの選手も同じ気持ちだったようだ。
シェイの欠場を知って「気が緩んで緊張感がなくなった」と、マルコム・ブログドンは言う。
「余裕だと思ってプレイするとこういうことになる。自業自得だよ」と、ブラウンも話している。
スロースタートのサンダー「勝利の鍵は試合の立ち上がり」
気を抜いたセルティックスに対し、サンダーは第1Q出だしから気合いの入ったディフェンスを見せ、ペースを上げ、積極的にアタックし続けた。
「この試合の鍵は立ち上がりだった」とサンダーのヘッドコーチのマーク・デイグノートは言う。
「ディフェンスでは基礎がしっかりできて、悪い習慣を修正することができた。この2試合(シャーロット・ホーネッツ戦とフィラデルフィア・76ers戦)は、我々が望むようにはできていなかったからね」
「オフェンスについては非常に良いペースでプレイできたと思う。スクリーンやスリップアウトで懸命に動いてた。セルティックスはすごくフィジカルなチームなのでそれは必須なんだ」
スーパースター選手のいないサンダーは、ものすごく気合い入れて全員バスケで立ち向かっている。ボールをよく動かして、みんながカッティングして、チャンスを作って、確率の高いショットを決める。楽しいバスケだ。#OKCvsBOS
— YOKO B (@yoko_okc) January 4, 2023
スロースタートのサンダーは、第1Qで大きくリードされ、追う立場になる傾向がある。しかし、この日はセルティックスを相手に34-33と互角の戦いを見せ、第2Qでは40-21と突き放し、20点をリードしてハーフタイムを迎えた。
とはいえ、相手はリーグトップのセルティックス。後半に入って一気にギアを入れ直し、追いついてくるはず。
と思いきや、なんとサンダーのほうがさらにギアを上げて、19-6のランを展開。最終的に第3Qに球団記録となる48得点をあげ、リードを31点に拡大する。
第4Qに入っても勢いの止まらないサンダーは、セルティックスの隙をついてはダンクを連発し、3Pを沈め、会場のファンの大歓声を浴びながら、最後まで楽しそうにプレイをして試合を終了した。
「こんなふうに毎試合プレイしたい」全員バスケで選手もファンも楽しんだ
「楽しかったよ」と、試合後にトレイ・マンが試合を振り返った。
「みんな笑顔で楽しんでいて、エナジーに満ちたプレイをした。こんなふうに毎試合プレイしたいね」
「選手として人として素晴らしいチームメイトがいて、試合で戦うことができる限り、誰が称賛されるかなんて特に誰も気にしないんだ」
体調不良で自宅で休んでいたシェイも、チームメイトの活躍を喜んでいた。
Shai is happy for the result😊 pic.twitter.com/LCAOnX44tj
— YOKO B (@yoko_okc) January 4, 2023
直近の2試合で苦い敗戦を経験した後で、全員が自信をもってプレイしたことについて「出だしから(それが)チームの間に広がっていくのを感じたよ」とギディーは言う。
「誰か1人がショットを決めれば、次の選手が自分も決められるって気分になる」
スター選手を欠き、サイズでも劣るサンダーは、試合開始早々から集中し、全員バスケで強敵セルティックスに立ち向かった。
ディフェンスを徹底し、全員がボールを運んで早いペースを維持し、誰もがプレイメイクができるポジションレスバスケットボール。まさにサンダーの目指すバスケットボールだ。
勝っていたのも理由かもしれないが、それだけではない。見ていて楽しいゲームだった。
ギディーは続ける。
「今日みたいに観客が一緒に盛り上がってくれると、それが選手のエナジーにつながるね」
途中から、すべてのショットが決まるかのような不思議なバイブスが、ペイコムセンター全体を包んでいたことは確かだ。
その勢いに乗って、今季初めて、ファンが2万ドルのハーフコートショットまで決めてみせた。
これは新年のお年玉のようなものだ。
何が入っているかわからない福袋といってもいいかもしれない。
開けてみたら、入っていたのはお気に入りのものばかり。
とにかくすべてがうまくいく。
そんな日だった。