2023年9月27日（日本時間28日）、オクラホマシティにあるION（アイオン）と呼ばれるオクラホマシティ・サンダーの練習施設で、メディアデーを前にサム・プレスティGMのプレシーズン記者会見が行われた。
会見はOKC時間の午前10時に始まり、2時間近く続いた。これは昨年とほぼ同じだ。
プレスティGMの会見は長くなることが多い。
どんな時も、プレスティGMは会見の最初にオープニングスピーチをする。
そして、そのスピーチはメディアに対してだけでなく、その現場にいない関係者やファンに対してのメッセージでもある。
その後、記者からの質問に答えるのだが、質疑応答だけで90分近くを費やす割に、その質問数は必ずしも多くはないように感じる。
その理由は、プレスティGMがそれぞれの質問に対して、とても真摯に、とても丁寧に答えるからだと思う。
そして、その回答のなかには、ときに音楽や本、他のスポーツやミュージカルなどあらゆるエピソードが織り交ぜられる。
端的に結論だけを聞きたい人には長すぎてつらいかもしれないが、私はいつも彼の話に聞き入ってしまう。
プレスティGMが選ぶ言葉や表現のその奥深さと、彼の口から溢れ出るその豊富な知識につくづく感心しつつ、私は頭をフル回転させてなくてはならなくなる。
ついていけない話題、理解できない表現、馴染みのない単語に惑わされることのないように、彼が伝えようとするメッセージに耳を傾ける。
不思議なことに、その場でそのメッセージは沁みてくるのだが、改めて会見を聞くといろんなことが漏れていることがわかる。
ということで、今年はプレスティGMの言葉選びにできるだけ忠実に、その会見の内容をまとめていこうと思う。
なぜ今、このタイミングでヴァシリエィ・ミチッチと契約したのか？
背景
サンダーは7月17日（日本時間18日）、ミチッチと複数年契約を結んだことを発表。
ミチッチは、2014年のNBAドラフト全体52位でフィラデルフィア・76ersに指名されたが、NBA入りはせずにユーロリーグでプレイを継続。その後、サンダーが2020年12月8日、76ersからアル・フォーホードを獲得したトレードでミチッチのドラフト交渉権も獲得していた。
以下、質問と回答。
——なぜ、このタイミングでミチッチを呼ぶことになったのか？
プレスティ：NBAの人事決定に関わることで、いつ起こるかは自分たちでは選べないんだ。例えば、チームを補完するためにこういう選手が欲しいなと思っても、他のチームからそういう選手を引き抜いてくることができないようにね。
私たちがその選手を本当に欲しがっていたら、相手チームもその選手をすごく欲しいし、その選手には価値がある。ある時点で特定の選手が欲しいと思って、チームに合う選手がいるとわかっていても、関係する全員が参加しなければ実現することはできない。
彼の場合は海外での契約があった。彼には海外で達成したい個人的な目標とチームとしての目標があったんだと思う。私たちは常に良好なコミュニケーションをとっていたし、契約解除がなかった年もあった。
今回はすべてがうまく整って理にかなっていたんだと思う。
いろいろな要素が絡むんだよ。いつも言っているように、すべては常に動いていて、止まっていることはない。トレードや契約を成立させるには、多くのことがピタッとはまる必要がある。今回は、多くのことがはまって合意に至ったんだ。
私見
聞いていたニュアンスでは、サンダーは常に彼が来ることを望んでいたというか、歓迎していたようだった。これまでOKCに来なかったのはミチッチの事情が大きいようだ。
ただ、今のサンダー的に、比較的年齢が上のベテランでユーロリーグではMVPも受賞しているミチッチを呼んで、若手選手とのバランスがどうなのかは気になるところだ。
ミチッチとサンダーのフィットはどうなのか？
プレスティGMは、そのあたりに少し触れている。
プレスティGMの回答の続き
プレスティ：彼のゲームに関して言えば、 誰もが知っいるように、NBAは、プレイする方法を知っていて、ボールの扱いが本当に上手で、ゲームの進め方を予測できるスキルのある選手にとても有利だ。
彼はそういう面を多く備えた選手だ。
それがどうNBAで発揮されるか？その答えは今はわからない。最初の10試合から20試合、彼のプレイを見たからといってそれで答えが出るとも思っていない。
彼が学ばなければならないことがあるし、私たちも彼について学ばなければならない。彼に具体的に何ができて何ができないという固定概念は持っていないんだ。
それは当時に、誰と一緒にプレイしているかということも関係してくる。
人はある分野で優れたスキルを持っていても、それを補完するスキルも持ち合わせていることはない。それを補うのは他の選手だ。
チームというのは、補完し合ってこそ本当に良くなるものなんだ。単なる才能ある人たちの集合体とは違う。チームの潮位（平均値的なもの）を見つけなければいけないし、彼がチームと良いコンビネーションを見せるかどうかはこれから様子を見る必要がある。
私見
少なくとも、サンダーがどんなチームで何を目指していて、ミチッチに何を求めているかは、契約前にプレスティGMが明確に示しているはずだ。
その上でミチッチが契約に至ったとすれば、彼がどんな役割になるにせよ、エゴ丸出しになることはないだろう。彼の性格をまったく知らないので実際にはものすごく謙虚な人なのかもしれないが。
起用の仕方については、プレスティGMよりもマーク・デイグノートHCに質問したほうがいいとは思うが、おそらく今シーズンもあらゆるローテーションを試すことは変わらないのだろうと予想している。
そして、サンダーにミチッチがどうフィットするのかは、シーズン中盤以降までわからない可能性も高い。
