3月11日: NBAが中断した日 (2) 無観客試合へのカウントダウン
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NBAがシーズン中断を決断した3月11日。

今回、NBAファンにとって衝撃的だったあの決断に至るまでを、ゼロ地点の現場にいあわせた私の目線で振り返ることにした理由はいくつかある。

サンダーファンとして現地ブログを書いているからには、あの歴史的瞬間の現地の様子をシェアしておきたいというのがひとつ。

でもそれ以上に、私自身が、あの日、そしてあの日に至るまでの間に、一体何がどう進行していたのかを知りたかったというのが実は大きい。

今回のNBAの決断には、当然ながらコロナウイルスにおけるアメリカや世界の情勢が大きく影響していて、このことをブログにまとめるにあたり、改めて周辺事情をあれこれ追いかけてみると、本当にいろんなことが同時に起きていたことがわかった。

話を広げ過ぎるとキリがないのだが、まずは前回まとめた3月3日までにアメリカで何があったか簡単に触れておきたい。

前回の記事はこちら

 

アメリカにおけるコロナウイルス感染の始まり

アメリカで最初の感染ケースが報告されたのはワシントン州で、それも1月20日のこと。

その後、イリノイ州、カリフォルニア州、アリゾナ州、マサチューセッツ州、ウィスコンシン州が感染を発表。全て中国への旅行していた人達だったらしい。

オレゴン州では2月28日に初の感染者が出たと発表があり、同州ポートランドに本拠地のあるブレイザーズ所属のCJ・マッカラムが、20秒以上の手洗いのススメとともに、落ち着くまで今後サインはしないと早々にツイートしていた。

 

2月中に、サンフランシスコやワシントン州などの自治体では非常事態宣言が出され、3月に入ってアメリカ国内でもコロナウイルスに対する危機感は徐々に高まっていった。

それを受けての、NBAからのファン対応制限の勧告だったのだろうと今更ながら思う。

 

まだ大丈夫なのか、もうやばいのか、アメリカ全土が皆よくわかっていなかったように前回書いたが、危機感を持っていたのはおそらく一部の州の人達だけだったのではないかと思う。

例えばこの時はまだ、オクラホマ州ではまだコロナウイルス感染者は出ていなかった。

選手が変わらぬ対応をしてくれたことに加えて、そのことも私が『まだ大丈夫』と思うひとつの理由だったのかもしれない。

 

 

サンダーの遠征が始まり、さらに薄れていく危機感

3月3日のロサンゼルス・クリッパーズとの試合を終えたその日のうちに、オクラホマシティ・サンダーはチャーター機でデトロイトに飛び立った。

ホームゲームを終えた翌日から、サンダーは3つの都市でアウェイゲームが控えていたのだ。

まずは3月4日水曜日、デトロイトでのピストンズとの対戦。前日のクリッパーズ戦の疲れか、4Qに失速するも、なんとか勝ちを収めている。

その夜のうちにNYに降り立ったサンダーは翌日5日は休息日。

NBAストアではシェイ・ギルジャス・アレクサンダーのサイン会が企画され、ファンと交流する様子がSNSにアップされていた。そこからは特に厳しい規制があったようには感じられない。

 

肝心の3月6日金曜日、NYでのニックス戦にも危なげなく勝ち、アウェイゲームをしっかりとモノにしていくサンダーにただワクワクしていた。

こうして私が3月3日にチェサピークアリーナで感じた小さな危機感は、サンダーのアウェイでの活躍でどんどん薄れていくのだった。

 

感染拡大と無観客試合へのカウントダウン

一方で、アメリカ国内では確実に感染は広がっていた。

3月4日にはカリフォルニア州で、3月5日にはメリーランド州で非常事態宣言を出し、さらに、3月6日には、ユタ州、ケンタッキー州、ペンシルバニア州がそこに加わった。

そしてNBAが再び動きを見せる。

NBAが無観客試合の検討を各チームに要請

3月6日金曜日の夜

ニックス戦が終わった頃、NBAが各チームに対して「無観客試合も選択肢に入れて協議を始めるように」と指示したことが報道される。

無観客試合という思い切った策に出る可能性が出てきたことで、事態はもっと深刻なのかもしれないと、また少し認識を改めた。

そしてこの日、オクラホマ州でも初の感染者が出た。イタリア旅行からの帰国者で、OKCではなく隣のタルサだったが、とうとう来たかという感じでもあった。

それでも、その後SNSにアップされるサンダーの練習風景やインタビューを見る限りは、特にいつもと変わった様子はない。

3月8日のセルティックス戦の前にアダムスがファンサービスをしている写真も微笑ましかった。

 

実際にはいつもと変わりがなかったわけではないかもしれない。私が見たいものだけを見ていたのかもしれない。現場では違うことが起きていたのかもしれない。

正直に言えば、この時の私はコロナウイルス云々よりも、サンダーがこのロードトリップを見事な3連勝で終えたことに心を奪われていたから。

特に、さすがに厳しいだろうと思ったボストンで、デニス・シュルーダーが素晴らしいスティールからレイアップを決め、最後はクリス・ポールが燻銀のディフェンスを見せ、きっちり勝ちをもぎ取って帰ってきたことは嬉しくてたまらなかった。

さらに、セルティックスに勝ったことで、サンダーがヒューストン・ロケッツを抜いてウェスタンカンファレンスの5位に浮上したことにワクワクし、少しだけ、ほんの少しだけ、調子に乗っていた。

 

オーナー会議の開催とロッカールームへの制限を発表

3月9日月曜日

NBAが、そんな私の出鼻をくじいて、無観客試合に向けてのカウントダウンとも取れる動きをする。

ひとつのは、3月11日の午後にNBAが各チームのオーナーや役員と電話会議を開くという発表。

コロナウイルス感染予防のためにすべき次のステップを協議するためで、それも、その次のステップとやらがかなり思い切った対策でなければまずいとトップが感じていると言われていた。

もう一つは、NBAが「翌10日からロッカールームに入れる人を制限する」という声明の発表だった。

 

各チームに無観客試合の準備を検討するように伝えたことから踏み込んで、具体的な形で選手と関わる人達を制限する今回の動きは、無観客試合に向けての準備段階に入ったようなもの。

ということは、11日の午後の電話会議で無観客試合の実施が決まるのはほぼ確実で、早ければ13日金曜の試合にはもうアリーナには行けなくなる。

『もしかしたら、11日の試合を最後に、今シーズンは当分アリーナに行くことはないかもしれない。』

この数日で何度も頭をよぎっていた思いが、現実になる予感がした。

 

無観客試合へのカウントダウンが始まる

3月10日火曜日

実際に10日から行われた選手やコーチへのインタビューの様子は明らかに今までと違っていた。

8日の試合後のインタビューはこの距離で。

 

そして10日の練習後のインタビューは会見式で、テーブルを挟んで。

 

ちなみに、ガロはこのインタビューでイタリアの状況に触れ、チームメイトにもコロナウイルスの深刻さを理解してもらおうと努力していると話している。

 

インタビューの様子は他のチームのメディアも多数ツイートしていた。パーテーションで仕切って距離を取っての囲み取材は、メディアも少しやりにくそうに見えた。

全チームが一斉に変わった。これまでとは明らかに違う変化だった。

 

それでもその日に行われたサンダーのチームの集合写真撮影の時のこの選手達の笑顔を見たら、また早くこのチームを観に行きたいと思ってしまう。

サンダーは、ここまで大方の予想を上回り、西の5位につけている。この快進撃はサンダーファンにとって嬉しい誤算だ。

ラスのような派手さはないが、ひとりひとりができる全てを出し、チーム一丸となって戦う姿を追いかけているうちにどんどん大好きになっていった。

彼らに直接声をかけ、アリーナで思いっきり声援を送るのが当たり前のような日々を送ってきた私にとっては、アリーナに行けなくなるかもしれないという現実は、頭では理解できてもなかなか受け入れ難い。

とにかく11日のホームゲームに行って、何が起きているのか、何が変わったのか、肌で感じてくるしかない。そう思った。3月3日の時とは明らかに事情が違うのだ。

コロナウイルスは、あれから更にアメリカ全土に広がりを見せていた。

無観客試合に向けてのカウントダウンは確実に始まっていた。

いや、実際にはそれ以上のことが、もう始まっていた。

 

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