オクラホマシティ・サンダーは10月19日(日本時間20日)、ミネソタ州ミネアポリスのターゲットセンターでミネソタ・ティンバーウルブズと対戦。2022-23シーズン開幕戦、サンダーは108-115で敗れている。
「みんなワクワクしているよ。『新学年の初日(the first day of school)』だからね」
開幕戦前日の10月18日、チーム練習後の囲み取材でマーク・デイグノートHCは、開幕戦を控えた選手たちについてこう話していた。
よく使われる言い回しだが、まさに若いサンダーにとってピッタリな表現だろう。
今シーズン、サンダーのロスターは平均年齢23歳と54日でリーグで最も若いのだ。
さらにマークHCは、学校の初日にはシーズン全休のチェット・ホルムグレン以外の選手がすべて出場可能だと話した。
つまり、プレシーズンの全試合を欠場したシェイ・ギルジャス・アレクサンダーもマイク・ムスカラも、途中から欠場したケンリッチ・ウィリアムズも、全員試合に出れる。サンダーにとっては嬉しい初日だ。
しかし、対戦相手のウルブズは、このオフにユタ・ジャズから身長216cmのルディ・ゴベアを獲得し、身長213cmのカール・アンソニー・タウンズ(KAT)とのツインタワーでインサイドの強化に成功したチーム。
一方、サンダーがプレシーズン中にセンターとして起用したのは、アレクセイ・ポクシェフスキー(ポク:213cm)、ジェレマイア・ロビンソン・アール(JRE:206cm)、ダリアス・ベイズリー(ベイズ:203cm)。身長211cmのムスカラが復帰となっても、体格差は否めない。
「彼らのフロントラインは大きく、チーム全体でポジションにかかわらず大きい。そういうチームと戦うためにはそこをどう埋め合わせるかを見極めなくてはいけない。タウンズやゴベア、(アンソニー)エドワーズのような良い選手たちを相手にどう戦うか対策はある」
これが、体格差にどう挑むのか、アプローチを変えるのかをマークHCに聞いた際の返事だ。
当然プランはあるだろう。対策も準備もなしに戦って勝てるはずがない。
一体どんなプランだったのか。
スターティングラインナップを見て驚いた人も多いはずだ。
GAME RESULT : OKC 108 – MIN 115 (0-1)
STARTING FIVE
おそらくほぼほぼスタメン確定のシェイ、ジョシュ・ギディー、ルーゲンツ・ドートの3人にプラスして、センターにはポク、そしてフォワードにケンリッチ(201cm)を起用。
ゴベア対ポク、KAT対ケンリッチでスタート。
GAME FLOW & STATS
前半はプレシーズンで見たサンダーは見当たらなかった。サンダーが放つ3Pは外れまくり、ボールはあまり回らない。
ウルブズの大きさとディフェンス、中も外もあるオフェンスに苦しめられた。ゴベア対策でヘルプに行けば、キレイにスクリーンをかけられて外から3Pを決められるシーンを何度見たか…。
それでも第3Qに入って調子を取り戻したサンダーは、そのクォーター終盤に27-5のランを展開してなぜか逆転。
しかし、第3Qの残り40秒間でウルブズが連続6得点をあげて87点の同点で第4Qへ。
サンダーはその後も粘りを見せたが、最後は相手が上だった。
「今夜の我々のピークは第3Qで、第4Qは相手も全力で向かってきた。そこまで来たらベストのチームが勝つものだ。最後の12分間は彼らの方が上だったということ。彼らを褒めるべきだね」 —マークHC
TAKEAWAYS from the GAME
シェイがめでたく復活も、前半は『サイレントキラー』呼ばわり
昨シーズンの3月以来の試合となったシェイは、以前と変わらぬドライブも見せつつ、チームをしっかりリードした。
チーム最長の36分の出場で、チーム&ゲーム最多の32得点、5アシスト、6リバウンド、2ブロック、3スティールを記録。FG成功率は52.2%、3P成功率は33.3%。フリースローもしっかり獲得して6本中6本すべてを沈めている。
speeding up going down hill 🏎💨@shaiglalex | #ThunderUp pic.twitter.com/FQcsu4h80u
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
後半調子を上げていったシェイだが、試合後にマークHCはこう話した。
「コンディショニングの面では、彼はまだまだこれからだ。前半は全くスピードがなかったと思う。彼とジョシュがね。あれがチームに大きく響いて、それが前半の『サイレントキラー※』のようなものだった。私たちのチームは前半はスピードが遅かったが、第3Qになって勢いが出た。
うちのチームは選手層が厚くて若い選手もいるので、もっと速いスピードでプレイしなくてはいけない」
※サイレントキラー:『静かな殺し屋』と訳されることが多く、自覚症状が現れないままに進行して致命的な合併症を誘発する病気のこと
マークHCは、シェイとジョシュが前半にペースを上げなかったことが痛手だったと考えているわけだ。
サンダーのウルブズ対策はスピード
つまり、体格差のあるウルブズを相手に、サンダーが取った対策はスピードでの勝負、特にトランジッションに持ち込むことだった。
マークHCは言う。
「相手が大きなチームの場合、トランジッションではそのサイズが彼らの負担になる。言うのは簡単なんだがね。彼らは優れたチームでリバウンドもうまい。でも、相手を止めてボールを奪えれば、あのチームを走らせることができるんだ」
サイズで不利な分、ペースを速めて相手を苦しめること。
ディフェンスでしっかり止めてボールを奪い、速攻に持ち込むこと。
実際に、速攻からの得点は17-10とサンダーがウルブズを上回っている(ペイント内の得点は38-50で完全に負けているが)。
サンダーは、後半になってディフェンスが明らかに良くなり、それに伴ってオフェンスも良くなった。
その切り替えについてマークHCはこう話している。
「ハーフタイムでうまく対応ができ、ディフェンスも動きも良くなった。ディフェンスではもっとフィジカルに、オフェンスのではもっと勢い強くプレイできたと思う。前半には攻守で明らかに欠けていた点だ。よく軌道修正できたと思う。もっと早くそれができるようになりたいところだが、そこから学んでまたチャンスにつながった。それはポジティブなことだ」
さらに、サイズの違いは身長だけの問題ではない。サンダーの選手たちは基本的に長くて細いのだ。フィジカルだけでは勝てるはずがない。
そこで、強さに強さで対抗するのではなく、速さを利用したことで、リバウンド数でも57-55とサンダーがウルブズを上回っている。
「今日の試合で一番良かったことは、攻守で、そしてリバウンドで相手を苦しめたことだ。チームが激しく動き、気迫に満ちていた時は、私たちを相手にするのは大変だったはずで、それが大きな力になった。もちろん、勝利のためにはもっと必要だったがね」—マークHC
“Scrappy Thunder” — 闘志満々のサンダー
第3Qでチームの流れを変えた立役者がいる。
2Way契約で、リンディ・ウォーターズ三世を抑えてチームのアクティブロスターに入ったユージーン・オモルイだ。
プレシーズンでは、そのフィジカルの強さとアグレッシブな姿勢で試合にインパクトを残し、確実に注目後がアップした選手だ。
スタッツには現れていないが、彼がこの試合に残したインパクトもまた大きい。
The sequence to take the first lead of the night 😤#ThunderUp pic.twitter.com/hgTvXfQde5
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
マークHCも絶賛している。
「誰がチームに勢いをつけてくれるか見ていたんだが、彼は素晴らしい仕事をした。アクティブな選手はみんな準備しておかなければならない。オモルイの起用は事前に予定していたわけではないが、試合の状況や彼のこれまでのプレイを見て、少なくとも彼は一生懸命戦ってくれる自信があった。
彼が取り組むべきことはまだまだたくさんある。特に、14分で5つのファウルをしているしね。でも、彼はチームに素晴らしい刺激を与えてくれたよ」
オモルイのテイクチャージ、ケンリッチのテイクチャージ、そして数多くのディフレクション。
後半はディフェンスからオフェンスへの流れがポイントになった。
Short memory mindset 👌@aleksejpokusevs | #ThunderUp pic.twitter.com/CEYL9yf6Km
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
Defense heating up the offensive flow ⚡️#ThunderUp pic.twitter.com/ZQ9kW3O3jv
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
「闘志満々だったね。ルーズボールやチャージなど、ちょっとしたことで相手より優位に立てるんだ。だから、闘志あふれる試合は僕らには合っていると思う」—ギディ
そんなふうに話すギディーのプレイで残しておきたいのは、彼のインバウンドパスのビジョンと正確さ。
プレシーズンでも見せていたが、今シーズンも楽しみなプレイだ。
20/20 Giddey vision@joshgiddey | @shaiglalex pic.twitter.com/DqrT1mPsR2
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
本当によく見えているし、ピンポイントでパスが出せることが素晴らしい。
チームメイトとの息もピッタリと言うことだろう。
その他諸々
- ギディーのチップ・エフェクトは初日には息をひそめた(3P成功率28.6%)。再度、師に指導を仰いでほしい。
- 第3Q、KATがブロックに来ても怖じけずにダンクをしかけたポクは成長している。以前はフリースローももらえなかった(というか、もらえるほどフィジカルに相手にぶつかっていっていなかった)彼が、プレシーズンからフィジカスさを増している。そしてFTを獲得している!
- JDubことジェイレン・ウィリアムズと、ウスマン・ジェン、オモルイがNBA初出場。
- JDubは第2Q途中に肘鉄を右目に食らってロッカールームに下がった。試合後に右目が腫れている写真をインスタグラムのアイコンにしている。状態についてはわかり次第、マークHCからアップデートがある予定。
- ミネソタ出身のムスカラさんがミネソタで復活。調子が出てくるまでまだ時間がかかりそう。実はプレシーズンで休んでいた足首のけがは、手術をした方の足首じゃないらしい。
- ミネソタ出身のチェットは今回の遠征に帯同。常に帯同するわけではないが、今回は特に家族や友達との時間も取れるため。チームケミストリー構築のためにも帯同することは今後もあるという。
- トレーニングキャンプ中もプレシーズン中も、そして試合後にもマークHCが再び明言していたが、サンダーのスターティング5は流動的。いろんな組み合わせを見ながら決めていく。つまり、次は誰がスタメンかわからないと言うこと。
With more physicality and force on display, the third quarter was a change of course that provided valuable lessons for the squad last night. #ThunderUp pic.twitter.com/8uIKIQ2JsW
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 20, 2022
NEXT GAME: 10月22日 第2戦はアウェイでナゲッツ戦
サンダーの第2戦は、10月22日土曜日午後8時から(日本時間23日日曜日午前10時から)、コロラド州デンバーのボール・アリーナでデンバー・ナゲッツとの対戦。
動けるビッグマン、ニコラ・ヨキッチを誰が守るのかも気になるところだが、格上チームが相手なので、とにかく胸を借りるつもりで思いっきりぶつかってみてほしい。