【プレスティ会見】シェイがこの夏のW杯で見せた実力はサンダーに何をもたらすのか?
シェイ・ギルジャス・アレクサンダー 撮影©️YOKO B
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2023年9月27日(日本時間28日)、オクラホマシティにあるION(アイオン)と呼ばれるオクラホマシティ・サンダーの練習施設で、メディアデーを前にサム・プレスティGMのプレシーズン記者会見が行われた。

会見はOKC時間の午前10時に始まり、2時間近く続いた。これは昨年とほぼ同じだ。

プレスティGMの会見は長くなることが多い。

どんな時も、プレスティGMは会見の最初にオープニングスピーチをする。

そして、そのスピーチはメディアに対してだけでなく、その現場にいない関係者やファンに対してのメッセージでもある。

その後、記者からの質問に答えるのだが、質疑応答だけで90分近くを費やす割に、その質問数は必ずしも多くはないように感じる。

その理由は、プレスティGMがそれぞれの質問に対して、とても真摯に、とても丁寧に答えるからだと思う。

そして、その回答のなかには、ときに音楽や本、他のスポーツやミュージカルなどあらゆるエピソードが織り交ぜられる。

端的に結論だけを聞きたい人には長すぎてつらいかもしれないが、私はいつも彼の話に聞き入ってしまう。

プレスティGMが選ぶ言葉や表現のその奥深さと、彼の口から溢れ出るその豊富な知識につくづく感心しつつ、私は頭をフル回転させてなくてはならなくなる。

ついていけない話題、理解できない表現、馴染みのない単語に惑わされることのないように、彼が伝えようとするメッセージに耳を傾ける。

不思議なことに、その場でそのメッセージは沁みてくるのだが、改めて会見を聞くといろんなことが漏れていることがわかる。

ということで、今年はプレスティGMの言葉選びにできるだけ忠実に、その会見の内容をまとめていこうと思う。

 

シェイがこの夏のW杯で見せた力はサンダーにとってどういう意味があるのか?

背景

シェイ・ギルジャス・アレクサンダーはこの夏、ルーゲンツ・ドートとともにカナダ代表に選ばれ、FIBAワールドカップ2023に出場。カナダは3位決定戦でアメリカ代表を破り、銅メダルを獲得した。

カナダの銅メダル獲得に大きく貢献したのが、シェイだった。

以下、質問と回答。

——シェイはこの夏W杯で見せた実力をサンダーにもたらすことができるか?その重要性は?

プレスティ:私たちが信じているのは、経験の多様性なんだ。

いろいろな選手とプレイすること。私たちが多くのラインナップをプレイする理由のひとつは、それが競技上、私たちにとって有利だからだ。単に育成のためだと考えている人も多いと思うが、必ずしもそうではない。選手たちは常にずっと同じ4人とプレイできるわけではないから、競技上、私たちのアドバンテージになるんだ。

特にポストシーズンに入って重要なゲームをプレイするときは、いろいろな環境でいろいろな人とプレイする経験が必要になる。 外気温が75°F(24℃)で天気が良くてそよ風が吹いているような環境(慣れ親しんだ条件の揃った環境)だったらうまくプレイできるというのはプロ選手ではない。

 

その一例を挙げよう。そういう状況で偉大なものが生まれた話だ。

有名なジャズピアニストのキース・ジャレットのコンサートの話だ。彼の最も偉大で最も独創的なコンサートのひとつがケルンでのコンサートだった。「ザ・ケルン・コンサート」と呼ばれている。ひとつ言っておくが、彼はヨーロッパ中で演奏している。

そのコンサートは夜の11時半に始まるはずだった。その前に別の予約が入っていたためだ。

彼は特定のピアノでプレイする名演奏家だ。ところが、彼らは間違ったピアノを注文した。彼は自分がいた場所からケルンまで飛行機で行けず、車で行かなければならなかった。彼は遅れてやってきて、ピアノが間違っていることに気づく。

たいていのアーティストや、おそらく何人かの選手がそうであるように、彼らは時として、こういった状況で大きな期待を抱いてしまうことがある。これまでうちにそんな選手がいたことがあるというわけではなくてね。

でも、彼らは優秀な人材だから、そういう優秀な人材の取り扱いを学ばなければならないんだ。 自分の思い通りにならないときも、与えられたありのままの状況でどうにかしなくちゃいけない。

彼はコンサートの前に食事をしに行ったんだが、レストランでは注文を間違えられてしまう。食事が来たときにはもうかなり遅くて、たった3口くらいしか食べれなかった。それから、コンサート会場に行ってみたら違うピアノがあって、それもちょっとぶっ壊れたピアノだった。

でも、彼はその夜、人生最高の演奏を披露したんだ。完璧じゃなかったからこそね。いつものように演奏することができなかった。状況が変わってしまって、そういう事態に追い込まれたんだ。

コンフォートゾーンから外に踏み出すことと、コンフォートゾーンを広げることは違う。例えば、冷たいプールに5分間入ることは誰にでもできるが、毎日15分間入れるか?それがコンフォートゾーンの拡大であり、冒頭で話したような不快感や不確実性を許容することだ。不確実なものごとに対処できなければならない。

彼は最高の演奏をした。もし彼にいつもと同じセッティングが用意されていたら、それは達成できなかっただろう。

 

シェイがさまざまな状況でプレイすることは、うちのどの選手の場合でもだが、彼らに異なるポジションでプレイすることを求めたり、異なる状況でプレイしたり、ハーフタイムでラインナップを変えたりすることは、私にとってはそれは発見になる。

高い志があるのならそこを目指すべきで、このチームがやっていることを真似している場合じゃないんだ。そこには主体性がない。シェイがやっていることはそういうことだと思う。

 

もうひとつ付け加えたいのは、彼のオフシーズンのレジメン(養生法、食養法、運動療法のこと)は強烈だということだね。彼は研究室にいるんだ。

彼はハミルトン出身だが、ハミルトン出身の教授は2人いる。1人は研究室にいるシェイで、もう1人は「プロフェッサー」と呼ばれているニール・パートというラッシュのドラマーだ。だからハミルトン出身の教授は2人いるんだ。シェイは教授がもう1人いることにおそらく気づいていないだろうが、とにかく彼は研究室にいるんだ。

彼が研究室にいるときは、同じことを何度も何度も繰り返しているわけではない。彼がやっていることには変化があるはずだ。

(W杯のような)そういう試合でプレイすることは大きいと思うし、彼はさらに良い選手になって戻ってくるだろう。しかし、成長した彼とチームがどのようにプレイするかは考えていかなければならないし、またその逆も然りだ。

誰もが変化し、成長している。

だから庭師に休みはないと言われる。常に何かが育ち、常に何かを刈り取る必要があるからね。それでも素晴らしい庭を作ることはできる。

しかし、もしあなたが「いや、何もかも同じでなければならない。成長の余地なんて何もない」というのであれば、今現在目の前にしている以上のものを手にする機会を閉ざしているということだ。

私見

序文で話したとおり、プレスティGMは例え話が好きだ。

この回答だけでも、ジャズピアニストの話、教授の話、研究室の話、そして最後には庭師の話まで登場している。プレスティGMの会見を文字起こしすると、ちょっとした読み物になる。

さて、シェイの話をしよう。

昨シーズンのシェイの成長は著しく、もうこれ以上は伸びないのではという声もあった。ところが今回のW杯では、さらなる飛躍の気配を見せた。

そこに、プレスティGMの研究室&教授の話だ。これは今シーズンのシェイにまた新たな期待をしてしまうではないか。

そして、おそらく彼はその期待を超えてくることだろう。

彼も自分にチャレンジするのが好きで、新たなことにチャレンジするのが好きで、失敗するのが好きだ。失敗して学び、後退して成長する。その過程を楽しめるのがシェイだ。

ドート以外はいつもと違うメンバーとプレイしたが、彼は安定して活躍し、チームをリードし、勝利に貢献していた。

今シーズンのサンダーには新しく加入した選手も多い。チームのプレイスタイルは基本的に変わらないだろうが、一緒にコートに立つ選手は変わる。

異なる状況でいつもと違う選手とプレイした経験は、確実にシェイにとって、そしてサンダーにとってプラスになるだろう。

 

W杯での経験はシェイにどんな影響を与えたかという質問にマークHCはこう答えている

私たちは常に、成長というレンズを通して選手を見ている。どれだけ優れていて成熟していても、彼はまだ若手選手であり、まだ成長している途中だ。成長において強力なもののひとつは、状況を変えること、環境を変えることで、 今回は彼がこれまで属してきた環境とはまったく異なるものだった。

国を代表しているときに直面するプレッシャーの種類も違う。異なるゲームであり、(ファウルの)コールのされ方も違うし、スタイルも違う。サンダーからは、(ダービス)ベルターンス、ルー(ドート)、シェイ、ジャック・ホワイト、(ジョシュ)ギディーなど多くの選手が出場した。彼らにとって本当に貴重な経験だったはずだ。

 

W杯に出場したインターナショナルな選手が多いサンダーが、今シーズンどんなチームになるのか、私も「成長」というレンズを通してサンダーを見守っていきたい。

 

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