オクラホマシティ・サンダーは10月25日(日本時間26日)、ホームのペイコムセンターでロサンゼルス・クリッパーズと対戦。試合は108-94でサンダーが勝利し、今シーズン初白星を飾っている。
試合直前に、サンダーは左股関節挫傷のため出場が「questionable」(不確か)とされていたシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが出場可能となり、一方のクリッパーズは、カワイ・レナードがひざのケガのマネジメントで欠場と発表になった。
クリッパーズは、ポール・ジョージ(病気)とレナードという2人のスーパースターを欠いても、ベンチからジョン・ウォールが登場するという層が厚く手強いチーム。
それでもサンダー側はシェイが復帰とあって、初勝利への期待が多少高まったのも確かだ。
GAME RESULT : OKC 108 – LAC 94 (1-3)
STARTING FIVE
Let's get it! pic.twitter.com/rbSaHGak4s
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 26, 2022
ジョシュ・ギディーが右足首捻挫で欠場し、代わりにトレイ・マンがスタメンに。そしてアーロン・ウィギンズが入ってのティップオフ。
GAME FLOW & STATS
サンダーは珍しく序盤からペースを上げて行った。特に、シェイの復帰とウィギンズ起用が功を奏し、ディフェンスが効いていた。
What a finish!
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 26, 2022
The Thunder opened the contest up with an 8-0 run! pic.twitter.com/v8Zijj5QbA
第3Qに強いサンダーは健在。
TAKEAWAYS from the GAME
勝利の決め手はディフェンスとペース
確かにクリッパーズにはイビツァ・ズバッツがいたが、ここまでルディ・ゴベアやニコラ・ヨキッチなどのビッグマンで苦労してきたサンダーにとっては、ポール・ジョージとレナードがいないことで攻守の負担がかなり軽くなり、ズバッツへの対応にはそれほど苦戦しているようには見えなかった。
第3Qには、開始5分あたりから21-0のランを展開し、5点のリードを26点にまで広げている。ここ3試合ではなかった展開だった。
マークHCが言い続けている、相手を止めて、ボールを奪い、走ることができていて、さらにボールも回っていた。しかし、一番の肝はディフェンスだった。
サンダーはリバウンドで60-47(うちオフェンシブリバウンド21-7)とクリッパーズを大きく上回り、ターンオーバーの数はクリッパーズが18に対し、サンダーはわずか5。ターンオーバーからの得点は、サンダーが23点に対しクリッパーズは3点。スティールは12-5でサンダーが上だった。
「(ディフェンスは)大きかった。明らかに今日は3Pが良くなかったが、ディフェンスにおいてターンオーバーとオフェンシブリバウンドでボールをコントロールしてシューティングの調子の悪さを補うことができた」—マークHC
というのも、サンダーの3P成功率はたったの13%(30本中4本成功)しかなく、クリッパーズの32%を大きく下回っているのだ。3Pをこれだけ決められない状況で、14点差をつけて勝ったことは記録でもあるらしい。
OKC shot 4-30 (13%) from 3, the 5th-lowest 3-pt FG pct in a game won in NBA history with a minimum of 25 3-pt FGA. It’s the largest margin of victory (14) where winner shot below 15% 3-pt FG pct and the first team to win by double-digits per @ESPNStatsInfo
— Ohm Youngmisuk (@NotoriousOHM) October 26, 2022
OKCは3P成功率が13%(30本中4本成功)で、これは最低25本の3Pを打った試合の中でNBA史上5番目に低い3P成功率での勝利。3P成功率が15%以下のチームが勝った試合の最大得点差(14点)であり、2桁差で勝利した最初のチームである。
これだけショットが決まらないとなったら打つしかなく、サンダーは110本のショットを放った。これはクリッパーズの83本に比べて30本近く多い。成功率が低くても、結局バスケットに多くボールを入れたが勝つという原理に沿って、ひたすら打ったわけだ。
それはサンダーが速いペースで試合を展開したということでもある。
ディフェンスとペース。
今シーズンもこれがサンダーのバスケットボールの基本になりそうだ。
シェイ復活でトレイ・マンも輝く
シェイが復活してホッと胸を撫で下ろした人も多いだろう。
彼を欠いたウルブズ戦は(途中からギディーもいなくなったこともあり)、正直なところ締まりが悪かった。
そしてシェイはこの試合でもその存在感を見せつけている。
約37分の出場で、33得点、5リバウンド、8アシスト、3スティール、3ブロックという数字を残しただけでなく、3ポイントショット成功率100%(2本中2本成功)、フリースロー成功率100%(9本中9本成功)という完璧な試合をやってのけた。
少なくとも30得点、8アシスト、3ブロック、3スティール以上で、3P成功率100%、FT成功率100%という試合をしたのはNBA史上シェイが初だという。
Shai Gilgeous-Alexander of the @okcthunder is the first player in NBA history to ...
— OptaSTATS (@OptaSTATS) October 26, 2022
- score 30+ points
- dish out 8+ assists
- block 3+ shots
- notch 3+ steals
- shoot 100% from three
- shoot 100% from the line
... all in the same game.
得点力は周知の事実だが、ここで注目したいのは3スティール、3ブロックというディフェンスの要素。彼のディフェンスへの意識は高く、それはマークHCのお墨付きでもある。
試合後に「シェイのテンポは素晴らしかった。ディフェンスも素晴らしかった」と褒めた上でこう続けている。
「彼のディフェンス面での成長は、全体的な関わり方、目的意識、そしてチームの雰囲気を方向付けられることが大きく影響している。OKCに来た当初からやっていることだが、彼はリーダーとしての意識がすごく高まっている」
シェイもそれを認めている。
「ディフェンスをもっと良くしたいと思っているんだ。自分が目指している選手になるためには攻守にわたってプレイする必要がある。もっと強くなららなくちゃいけない。そのためにコンディショニングにかなり取り組んでいる」
そしてこの試合、シェイとともに輝いたのは弟分のトレイ・マン。
約36分の出場で、25得点、4リバウンド、4アシスト、2スティールを記録した。
3Pは8本中2本成功、FGは24本中10本成功と、必ずしも効率的だったとは言えないが、他の選手のショットが不調の中、非常に頼もしい存在だった。
そして、やはり注目すべきは4リバウンドと2スティール。それも4リバウンドのうち2本がオフェンシブリバウンドなのだ。
普段リバウンドに絡むことの少ないトレイがゴール下に飛び込み、ルースボールを追いかけ、そしてテイクチャージを2つゲットするというハッスルプレイを繰り広げた。
特にシビレたのはこの一連のプレイだろう。
Highlighting this Mann's hustle 😤#ThunderUp pic.twitter.com/puhBsE73pj
— OKC THUNDER (@okcthunder) October 26, 2022
「OKCに来てすぐに、プレイしたければディフェンスを怠るなと指導されたからね。このオフに身体を鍛えたことも大きいよ」
試合後、ディフェンス面での成長について聞かれたトレイはそう語った。
学生の頃からずっと3Pシューターとしてオフェンスで貢献してきたトレイに、マークHCが「3Pを打つ前にディフェンスをしろ(お菓子を食べる前にブロッコリーを食べろ)」と1年間言い続けたことが、2年目にして大きく花開こうとしている。
マークHCも嬉しそうだ。
「彼は(23日のウルブズ戦でディアンジェロ)ラッセルとの対戦したがきちんと対応ができていなかった。もっとずっと良くなることができるはずだから、またやらせてみたんだ。すごく良いチームとの対戦で彼を使う場合には、彼はそういうマッチアップに対応できなければならない。今夜彼は本当に良い仕事をしたと思うよ」
そして、トレイを弟のように可愛がるシェイも嬉しそうだ。
「トレイの特徴はあの自信と一生懸命なプレイだ。その2つを毎試合しっかりやれば、彼はすごい選手になるだろうね」
そしてこの笑顔である。
Shai and Tre… 👀 pic.twitter.com/gCmQxpVPJg
— THE UNCONTESTED PODCAST (@The_Uncontested) October 26, 2022
ドートのスランプはマークHCの責任
ドートのディフェンスはいつも通り素晴らしかったが、オフェンスではこのところスランプに陥っていると言っていいだろう。
プレシーズンで見られていたショットタッチは姿を消し、オープンな3ポイントショットであっても外しまくっている。インサイドに切り込んでファウルをもらう方が得策な気がするが、それでもひたすら3Pを打ち続けている。
この試合、25分の出場で、3Pを6本すべて外し、フィールドゴール11本中1本成功の4得点に終わった。
さすがにそろそろこのことに誰かが触れなくてはいけない。試合後にメディアに質問されたマークHCの返事は意外なものだった。
「彼が苦労しているのは私に責任がある。私たちは彼に進化し続けてほしいと思っていて、選手として彼に多くを求めている。それは彼に限らず、チームのほかのメンバーにも望み、指導していること。成長というのは時に痛みを伴うものだ」
ベイズがオフェンス面で苦労していた時に似ているのかもしれない。
チームにおける自分の役割、さらには自分のプレイスタイルや持ち味、アイデンティティがなんなのかを見極めるべき時が、ドートにも来ているのだろう。
主力が戦列を離れている時は、ドートに得点の負担がかかるのもわかる。そんな時は自信を持って3Pを打ち続けても構わないが、本来3Pを打つべき選手以上の試投数があるのはいずれ問題になる。
それでもシェイはこう話している。
「僕はルーがシューターじゃなかった頃から素晴らしいシューターになるのを見てきたし、彼がドラフト外から今に至るまでを見てきている。人生には良い時も悪い時もある。それはルーもわかっていると思う」
ドートには早く自分らしいオフェンスを見出してほしいと願ってやまない。
アーロン・ウィギンズ(とベテラン勢2人)
「彼は堅実な選手で、明確なアイデンティティがある。攻守にわたって仕事をし、素晴らしい成長をしている」 —アーロン・ウィギンズについてマークHC
この試合のウィギンズは本当に光っていた。28分の出場で、11得点、10リバウンドのダブルダブルを達成。さらに3スティール、1ブロックを記録している。
執拗なディフェンス、ルースボールへ飛び込むなどのハッスルプレイ、オフボールでのカッティング…。小さなことも集中力を切らさずにしっかりやり遂げる、彼の良さが全面に出ていた。
ハッスルといえば、ケニー・ハッスルの異名を持つベテラン選手、ケンリッチ・ウィリアムズも安定のハッスル振りだった。
25分の出場で10得点、7リバウンド、2アシスト、1ブロック。数字には出ない痒い所に手が届くプレイは本当に頼りになる。
そしてもう1人のベテランといえば、この試合に限らず今シーズン出番の多いマイク・ムスカラだ。
10分の出場で、8得点、10リバウンド、2アシストを記録。しかし、彼も数字以上に大きなインパクトを残している。
後半は最初からマイクを出場させた采配についてマークHCは「マイクを入れたら、相手チームがスバッツを下げたこと」がヒントになったと話している。
3Pシューターのマイクがいることで、スバッツは外に引っ張り出されることになる。結果、インサイドが空き、シェイやトレイ、ドートなどがドライブで攻めていくことができるわけだ。
マークHCはマイクについて、さらにこう付け加えている。
「彼は実際に素晴らしいシューターなので、素晴らしいシューターという言われ方をするが、実際は彼は素晴らしい選手なんだ。彼のディフェンスは過小評価されていると思う。プレイスタイルが似ているから、マイクはJ-Willの成長を助けることができると考えているよ」
ケンリッチの後継がウィギンズだとしたら、マイクの後継はJ-Will(アーカンソーのジェイレン・ウィリアムズ)になるのかもしれない。
NEXT GAME: 10月27日 第5戦はホームで再びクリッパーズ戦
サンダーの第5戦は10月27日木曜日午後7時から(日本時間28日金曜日午前9時から)、ペイコムセンターでロサンゼルス・クリッパーズ(2-2)と再び対戦する。
サンダーはギディーの欠場をすでに発表しているし、クリッパーズもレナードの欠場を発表している。ポール・ジョージが出場するのかが大きな鍵になりそうではあるが、いずれにせよ、サンダーに2連敗するわけにはいかないクリッパーズは対策を立ててくるはずだ。
次の試合もサンダーがどこまで集中力を切らさずに48分間を戦い抜くことができるかにかかっている。